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[MRA] 遠位尿細管~皮質集合管の上皮性ナトリウムチャネル(ENaC)に対するアルドステロン作用に拮抗して,ENaCを抑制することで,Na-K交換系を抑制する利尿薬.利尿薬としては珍しくK排泄を抑制することから,"K保持性利尿薬"とも呼ばれる. 全然この通りにしなくてもいいです. でも,臨床医の方は,利尿薬抵抗性の対応のかなり初期にMRAを検討しませんか? 「数ある利尿薬抵抗性の対応の中で,なぜMRAからなの?」 これは,(私の知る限り)ガイドラインには記載されていません. ではなぜか.理由は3つ. ➀点滴薬,内服薬ともにあり,使用可能場面が多い. ➁心不全予後改善エビデンスがある. ➂(ほとんどの利尿薬の副作用である)低K血症の予防・対策になる. ➀は,後で出てくるカルペリチドやサイアザイドに対するアンチテーゼです. 使用可能場面が多いことは,それだけで助かる存在なのです. ➁は,長期的な視点です. 「ここで導入しておけば,長期的にも心臓にとっていいことをしている!」 という大義名分がたつので,選択に迷える子羊には心強い因子です. ➂は,臨床医の判断材料ナンバー1などと思います. そもそも,低K血症を認めるということは,"利尿薬の副作用"という見方もあれば,"RAA系が代償性に亢進した結果"という見方もあるわけです. MRAの検討してしかるべきでしょう. 逆に, MRA使用の弊害 になること. それが, 腎障害と高K傾向 です. このことは,心不全診療ガイドラインにも明記されており,「急性心不全に対するMRA使用の推奨」は,『腎機能が保たれた低カリウム血症(ⅡaB)』『腎機能障害・高カリウム合併例には投与すべきでない(ⅢC)』となっています. 具体的な使用上のカットオフ値は明示されていませんが,私の使用目安は以下のような感じです. ポイントは2つ. ・腎機能が正常なら,高Kにビビりすぎない 腎機能が正常であればあるほど,過剰なKも排泄されやすいです. 特に,GFR≧60なら,MRAの影響"だけ"で致命的な高Kになる可能性は極めて低いので,ビビりすぎないようにしてください. ・ケイキサレート®のような高カリウム血症改善薬の併用を厭わない. MRAは優れた心不全治療薬であり, "高カリウム血症改善薬の併用で副作用を打ち消してでも,なるべく全例併用するべき" という主張も世の中にはあります(コンセンサスはありません).
(≫ 食塩感受性の解説はこちらの記事です .) また, 高Na血症 の症例でも検討できます. これは「良く効くから」というより,低Na血症になるサイアザイドの副作用を気にしなくていいことと,後述するトルバプタンの併用がしづらいことなどから,サイアザイドの選択を念頭に置きます. ➁腎障害にも対応.ユニークな作用にかける:カルペリチド併用 カルペリチドは,心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の遺伝子組み換え製剤で,利尿作用や血管拡張作用など,さまざまな作用をもちます. まず, 輸入細動脈の拡張効果 があり,CKD症例の 糸球体濾過率の低下を改善 させる可能性があります. また, 腎髄質血流の増加 など,ユニーク利尿作用の機序があり,他剤で得られない効果が期待できます.実臨床では稀に逆転ホームランにつながることがあり, いかんともし難い利尿薬抵抗性・体液量過剰 のとき, 最終手段 としてカルペリチドにすがることはあります. さらに,カルペリチドのユニークなところは利尿作用以外にもあります. とくに 血管拡張作用 は 心負荷軽減にとても有用 であり,心不全診療ガイドラインでは,カルペリチドは(利尿薬でなく)血管拡張薬カテゴリーです. 心負荷の軽減が,循環に好転をもたらすような状況が,利尿薬抵抗性と併存していた場合,カルペリチドの併用を試みてもいいと思います. (例:血圧上昇(後負荷上昇)や血管内over volume(前負荷上昇)を伴うループ利尿薬抵抗性状態) 難点は,(利点とのトレードオフですが) 血圧が下がる ことに注意が必要です. 重症心不全などで 低血圧状態だと使用しづらい です. また,薬剤の特性上, 単独点滴ラインが必要になる ので,(CVなどが入っている可能性の高い)集中治療室管理の方が出番は多いです. (≫ カルペリチドの解説記事はこちらです .) ➂低Na血症なら前向きに.腎障害でも使用しやすい:トルバプタン併用 トルバプタンは,集合管のバソプレシンV2受容体を選択的に阻害し,水の再吸収を抑制する 水利尿薬 です. 重症の心不全では,ADH系が亢進しています. トルバプタンの作用は,ADH系の効果部位を阻害することなので,腎臓に対しては ADH系を抑制するように働きます . ADH系の亢進は,水の再吸収を促し,低ナトリウム血症を来たします. ゆえに, 低ナトリウム血症 の症例は,ADH系の亢進が示唆され,利尿薬い抵抗性としてのADH系を抑制する トルバプタンの有効性が期待できます .
0を超える重度の蛋白尿の場合 血液検査でアルブミン(ALB)が2. 0mg/dlを下回る低蛋白血症がみられた場合 予後 予後は基礎疾患によりますが、一般にネフローゼ症候群を起こした糸球体疾患は予後が悪いとされています。 逆にネフローゼ症候群を起こす前ならば、基礎疾患の治療が良好であれば、タンパク尿が改善しなくても、長期間良好に経過することもあります。 まとめ 犬のネフローゼ症候群について解説しました。腎臓にある糸球体の異常で、尿中にタンパクが多量に漏れる病気で、それに伴い、腹水や浮腫、腎不全、血栓塞栓症、高血圧、失明などの症状がみられるようになってきます。 蛋白質(TP)の低下、アルブミン(Alb)の低下、総コレステロール(T-Cho)の上昇が見つかった場合にはこの病気を疑い、必ず尿検査を実施するようにしましょう。
➀CKDによる慢性的な腎交感神経亢進状態 輸入細動脈が収縮している状態なので,カルペリチドの使用で糸球体濾過を改善しつつ利尿をかけられる可能性があります. [β遮断薬ではだめか?] 交感神経の亢進が原因ならβ遮断薬が有効か? と思うかもしれませんが,β遮断薬は腎血流量を減少させる可能性があるので,利尿薬抵抗性に対してあえて使用することはないでしょう. ➁腎髄質血流の増加など,その他の利尿薬にはないユニーク作用にかける 腎髄質血流の増加がどれほど利尿薬抵抗性に有用なのかはわかりません. ただ,他剤で得られないユニークな作用は,実臨床では稀に逆転ホームランにつながることがあります. ゆえに,いかんともし難い利尿薬抵抗性のとき,最終手段としてカルペリチドにすがることはあると思います. ➂(言っていることが矛盾してますが)利尿作用以外の作用を狙って:心負荷の軽減 カルペリチドのユニークな部分は,利尿作用を有していながら"利尿薬カテゴリーではないこと"です. たとえば,心不全のガイドラインでは,カルペリチドは 血管拡張薬カテゴリー です. つまり,カルペリチドの効果の本幹は, 心負荷の軽減 です. 心負荷の軽減が,循環に好転をもたらすような状況 が,利尿薬抵抗性と併存していた場合,カルペリチドの併用を試みてもいいと思います. (例:血圧上昇(後負荷上昇)や血管内over volume(前負荷上昇)を伴うループ利尿薬抵抗性状態) (≫ カルペリチドの解説記事はこちらです. ) 3-3.ネフロンの減少への対応 ループ利尿薬を増量 することで効果が得られる可能性があります. ループ利尿薬の反応性と心不全・腎不全の関係性を示した有名なグラフがあります.☟ 要は, CKDによるネフロン減少が利尿薬抵抗性の原因であるなら (理論的には)用量を増やすだけで 正常な腎臓と同じような利尿反応性が得られる ということを示しています. ただ,この記事で説明しているように,利尿薬抵抗性とはさまざまな原因で起こり,特に心不全症例では, 心腎連関 のために後述するような 様々な神経体液性因子の亢進 が,利尿薬抵抗性の原因となっています. そのため,上のグラフのように,ただただループ利尿薬を増やしても,利尿効果が得られない(すぐに頭打ちになる),という話です. (≫ 心腎連関についての解説記事はこちら .)