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言ってはいけない 著者:橘玲 発売日:2016年04月 発行所:新潮社 価格:880円(税込) ISBNコード:9784106106637 新潮新書の『言ってはいけない』が売れに売れています。その昔「10万超えると業界人なら知っている本。周囲に購入者が多くなると50万越え、喫茶店で隣に座った人が読んでいるようになったら100万部」なんてな指標を勝手に作って愉しんでいた時期がありましたが、これは冗談にしても周辺で「買った」「読んだ」という声が聞かれるようになってきました(※ HONZのレビューはこちら )。 さて『言ってはいけない』はどんな人に読まれているのでしょうか?
最初に断っておくが、これは不快な本だ。だから、気分よく一日を終わりたひとは読むのをやめたほうがいい。 世の中には知りたくもなければ信じたくもない "真実" が数多く存在する。 仮にその話を聞いたとしても、脳や心が理解を拒み、生理的に拒絶をしたくなってしまう。 往々にして、努力は遺伝に勝てない。知能や学歴、年収、犯罪癖も例外ではなく、美人とブスの「美貌格差」は生涯で約3600万円もある。また、子育ての苦労や英才教育の多くは徒労に終わる。 そんな残酷すぎる真実を具体的なデータや実験に基づいて論じているのがこの『言ってはいけない 残酷すぎる』である。 社会にあふれるきれいごとを一刀両断した切れ味あふれる本となっている。 「言ってはいけない 残酷すぎる真実」のここが面白い 馬鹿は遺伝なのか? 頭の良し悪しは遺伝によって決まるのか?それとも育った環境によって決まるのか? 遺伝率と呼ばれる指標がある。 これは人間の様々な能力、例えば身長、体重、知能、性格、言語能力などにどれくらいの遺伝的な影響があるのかを図る指標である。 遺伝率の計算にはよく、一卵性双生児が用いられる。 とある一卵性双生児が生まれてすぐに親の事情によって別々の家庭、環境で育てられたとする。 そして20年後の彼らを見比べたとき、全く違うものを食べ、運動をし、睡眠をしていたのにも関わらず似たような身長、体重に成長していれば、身長、体重は育った環境ではなく遺伝による影響が大きいだろうとの結論になる。 これを数多の一卵性双生児や、他にも一卵性双生児と二卵性双生児を比較することなどによって計測し、遺伝率を求めていく。 血液型の遺伝率は100%である。 だれが親かでのみに依存して血液型は決定する。 身長の遺伝率は66%、体重の遺伝率は74%である。 やはり、親の影響を大きく受ける。 では、頭の良し悪しは遺伝するのか? 論理的推論能力の遺伝率は68%である。 知能指数(IQ)の遺伝率は77%である。 頭の良し悪しの7〜8割は遺伝によって説明できてしまう。この影響は大きい。 残念ながら、その子が将来勉強できるようになるかどうかの大部分は生まれた瞬間に決まってしまっている。 うつ病は遺伝の影響を受けるのか? 同じことがいわゆるうつ病にも言うことができる。 様々な研究を総合して推計された結果によると、 統合失調症の遺伝率は82%、双極性障害(躁鬱病)の遺伝率は83%である。 この数字は親がうつ病なら子供は8割の確率でうつ病になるといったわけではない。 身長が高い親の子は背が高くなる可能性が高く、うつ病の親の子はうつ病になりやすいということを比較するための数字である。 そして、その遺伝の影響はなんと身長・体重の影響よりも大きい。 うつ病は遺伝するとの「科学的知見」が得られている。 犯罪性は遺伝するのか 最後に"犯罪性"はどうだろうか?
その結果、彼らは「力」と「リーダーシップ」の印象だけで会社の収益をきわめて正確に予測した(「温かみ」は業績とは無関係だった)。この結果はCEOの顔立ちの端正さ、表情、年齢を揃えても変わらなかった。 しかも、被験者たちの脳をMRIで調べたところ、高収益の会社のCEOの顔写真を見ているときのほうが、扁桃体が活発に動いており、感情が動かされていることがわかった。(※2)。 容貌と経済的成功には何らかの相関があるということである。 幸か不幸か、日本では、こうした社会的タブーとされるテーマに関する研究、実験は少ないが、欧米ではある程度行われている。『言ってはいけない』では、そうした様々な研究成果を紹介しつつ、普段は口にできないような「真実」に迫っている。 ※1 詳細は、ダニエル・S・ハマーメッシュ『美貌格差』(東洋経済新報社)参照。 ※2 詳細は、マシュー・ハーテンステイン『卒アル写真で将来はわかる』(文藝春秋)参照。 シェア ツイート ブックマーク
イギリスの科学ジャーナリスト、ニコラス・ウェイドの 『人類のやっかいな遺産――遺伝子、人種、進化の歴史』 (晶文社)は、これまでPC(political correctness/政治的正しさ)の観点から「言ってはいけない」とされてきた分野に大胆に切り込んだ問題作だ。ウェイドは本書でなにを主張したのか。膨大なエクスキューズを後回しにして結論だけをいおう。 「約5万年前にアフリカを出た現生人類は、ヨーロッパ、アジア、アメリカ、オーストラリアなど(比較的)孤立した環境のなかで独自の進化を続けてきた。この進化の影響は、肌や髪の毛、目の色だけでなく、知能や気質など内面にも及んでいる。これが、人種によって社会制度や経済発展の度合いが異なる理由だ」 これがどれほど不穏な主張かは、「アフリカはなぜいつまでも発展しないのか」という問いを考えてみれば即座に了解できるだろう。だが「政治的」に許されないはずのこうした理論は、ゲノム解析技術の急速な進歩によって、現代の進化論になかで徐々に説得力を増してきている。 「人種にかかわらず人間の本性は同じ」は本当か? 「身体的な機能と同様に、ひとのこころも進化によってつくられてきた」と考える進化心理学は、その存在自体がリベラルの逆鱗に触れるものではあったが、それでも社会のなかでなんとか居場所を確保してきた。「進化のスピードを考えれば、ひとのこころは旧石器時代と変わらない」としたからだ。「現代人がさまざまな問題を抱えているのは、原始人のこころのままコンクリートジャングルに暮らしているためだ」というのはひとびとの心情に訴えるものがあったし、なによりも「人種にかかわらず人間の本性(ヒューマン・ユニヴァーサルズ)は同じ」というのは「政治的」な心地よさがあった。 だが「科学」の立場からは、こうした前提がきわめて不安定なのはあきらかだ。白人、黒人、アジア系では外見が異なり、アフリカから分かれた5万年のあいだに独自の進化が起きたことは間違いない。だが人種ごとに身体的特徴を大きく変えたその進化は、なぜか気質的、精神的特徴にはいっさい手をつけなかった、というのだから。 「文化や社会は遺伝・進化の強い影響下に置かれている」という考えは、1970年代にアメリカの生物学者E. O.
ある程度はどうにかなっても、決定的にどうにかならない事もあるんじゃ無いか?と、思ってきたこれまでの時間。 そんなモヤモヤしたものがスッキリします。 努力をしないから勉強も出来ない、努力をしないから運動ができない、努力をしないから同じ事で何度も失敗する。 全てを努力のせいにしがちな日本人に、そうでは無いこと、残酷な真実を教えてくれる1冊です。 アメリカのテレビドラマや映画では、日常的にカウンセリングの話題がでたり、カウンセリングに通うシーンがあったりします。 コレは普通のことで、日常なのです。 日本ではまだ、精神課に行くというと、どこか陰を宿し、触れてはいけない部分だという風潮がありますが、そうではないのです。 精神疾患も当たり前に遺伝するから、自分一人でどうにかなるものでないし、本人のせいでもない、専門家の力を借りて、早めに手を打った方がいいという当たり前のことなのです。 熱が出たから、動けなくなる前に、内科に行く。 おなかが痛いから、盲腸が破裂する前に、病院に行く。 ガン家系だから、がん保険に入っておく。 これと同じなんですよ。 遺伝の影響なんてあるわけ無いと思っている今の日本は異常なのです。 『言ってはいけない―残酷すぎる真実―』の冒頭にある「不愉快な本」との断りが、いつか消える社会が来ると良いと思う。 リンク リンク リンク
この問いに対してジャレド・ダイアモンドは世界的ベストセラーとなった 『銃・病原菌・鉄』 (草思社文庫)で、「横に長いユーラシア大陸と、縦に長いアフリカ大陸、南北アメリカ大陸の地理的なちがい」というエレガントな説を提示した。農業は人類史を画する革命だが、このイノベーションは同程度の緯度の地域にしか広まらない。アフリカ南部でもヨーロッパと同じ農業を営む条件は揃っているが、知識や技術はサハラ砂漠や熱帯のジャングルを越えることができなかったのだ。 だがウェイドは、これはものごとの半分しか説明していない批判する。 大陸ごとに知識・技術の伝播のちがいが生じるのはそのとおりだが、これは地形が人の移動を制限するからだ。ダイヤモンドは「人種などというものは存在しない」と断言するが、皮肉なことに、彼の理論は「孤立した集団が異なる進化を遂げた」という現代の進化論を補強しているのだ。 アメリカの歴史学者ニーアル・ファーガソンは『 文明: 西洋が覇権をとれた6つの真因』 (勁草書房)などで、東洋の専制政治に対して西洋は分散化した政治生活とオープンな社会を生み出し、そこから所有権や法の支配、科学や医学の進歩など数々のイノベーションが生まれたと説く。 アメリカの経済学者ダロン・アセモグルとジェイムズ. A.